校友スポットライト

vol.456(発行日: 2026年8月20日)

校友スポットライトでは、最前線で活躍する校友を紹介。
お仕事のことをはじめ、私生活や学生時代のエピソードなどをお聞きします。

ノズルネットワーク株式会社

https://www.nozzle-network.co.jp/

大阪工業大学短期大学部 機械科 1968年卒

代表取締役 

麻川 博良

さん

兵庫県の山間部にある静かなまちに、ノズル業界随一のスペシャリストがいるらしい―そんな噂を聞きつけて、麻川博良さんの元には国内外のさまざまな企業や大学、官公庁の方々が続々と相談に訪れます。82歳となった今もなお第一線に立ち、ノズルの研究を続ける原動力とは何なのでしょうか。その歩みとともに紐解きました。

人生初のノズル開発が大ヒット

液体や気体を霧状や扇状に噴射するために使われるスプレーノズル。産業分野だけでなく、シャワーや加湿器、街中で見かける暑さ対策のドライミストなど、暮らしの身近な場面でも活躍しています。その研究開発に心血を注いで約60年。麻川さんはノズルの可能性をひたむきに切り拓いてきました。
始まりは20歳のとき。九州の工業高校機械科を卒業し、新入社員として入社した超硬合金・ノズルメーカーで、ある時社長からスプレーノズルの新規開発を任されます。当時は専門的な技術も知識もありませんでしたが、持ち前の好奇心と探究心が麻川さんを突き動かしました。寝食も惜しんで開発に明け暮れること1年。完成した「デスケーリングノズル」は製鉄業界で広がり、自動車のボディにも使われる鋼板の表面処理に活用され、自動車の品質向上に大きく貢献しました。麻川さんは「社長が私の功績を大変喜び、”君は金の卵だ”と称えてくれました」と当時を振り返ります。

仕事と学びを両立しながら自分を磨く

この経験を礎に自身の技術をさらに発展させ、会社を成長させたいと考えた麻川さん。ますますノズル開発にのめり込んでいきます。その中で、高校で得た学びだけでは足りず、さらに高度な知識が必要であることを痛感し、社長に支援を申し出て、働きながら大阪工業大学短期大学部の機械科へ通い始めました。仕事を終えると足早に学校へと向かい、授業を受けた後、再び会社に戻って開発を続ける日々。「疲れた体に元気をくれたのは、校門前にあった小さな食堂の素うどんとカツ丼でした」。
積み重ねた技術と経験を生かし、56歳で業界初の総合ノズルコンサルティング事業に特化した「ノズルネットワーク」を設立。世界中のスプレーノズル情報を集約した業界初の検索システムを4年半かけて構築したほか、自動車、医療、電子、エンターテインメントなど多種多様な分野の特殊ノズルの研究開発を手掛けてきました。独自の技術を武器に、数多くの特許も出願。その一つである、少ない空気量で超微細な霧を生み出す噴霧技術「ミラクルフォグ」は、半導体工場の精密加湿や自動車メーカーの研究開発などに利用され、高い評価を得ています。

ノズルの先から液体がきれいに噴霧される

難題に挑み続け、目指すは生涯現役

「困りごとの相談を受けるたびに現場へ赴き、課題の核を探ります。難しい課題や未踏のテーマほど”おもしろそうだ”と心が躍り、依頼者の期待に応えたいという思いが原動力になる。完成したノズルを披露した際の皆さんの歓喜が、また次の開発への力になるんです」と麻川さん。開発に向けられる情熱は一度も尽きたことがないといい、「何より楽しくて仕方がない。四六時中ノズルのことを考えていれば悩みも生まれませんよ」と笑います。
世界でオンリーワンの技術を支えているのは、泉のように湧き出るアイデアです。ひらめくのは、決まって朝の身支度をしているときなのだとか。「鏡の前で歯を磨いていると、あの形にしたら、こんな風に噴射するんじゃないか、なんて考えが浮かぶともう止まらない。何はさておき実験室にこもって、あっという間に時が過ぎていきます」。
夢は、生涯現役でいること。会社の壁に掲げられた「天下霧滴(てんかむてき)」の書は、飽くなき挑戦を続ける麻川さんの人生そのものを映し出しているようでした。